大腸

コールドポリペクトミーのコツ

manabi

☆医療者向け
☆試行錯誤

コールドポリペクトミー。
小さな大腸ポリープに対する内視鏡的切除術の主流ですね。
なにがコールドかというと、高周波発生装置を用いて電流で焼き切る(ホットポリペクトミー)わけではなくて、機械的に、物理的にスネアで絞り切る手技なので、コールドっていうんですよね。

たぶん、最近の消化器内科医がポリープ切除をするときは、まず、このコールドポリペクトミーから始める機会が多いんじゃないでしょうか。

熱を加えない分、合併症も少ない。
でもその分、気を遣ってきっちり切除を心がける。

この前、レジデントの先生の手技をみていて、色々教えてあげたいけど、ぱっと要点が出てこなかったので、自分のためにまとめてみます。コールドポリペクトミーのコツ。

①視野作り
 コールドに限らず、ポリペクトミーの基本として、内視鏡の鉗子が出る直線ライン上にターゲットが来るように位置取りをする必要があります。下部のスコープであれば、O社スコープでは5~6時ですね。

どうしてもこの方向に持ってくることができず、12時方向などでやらざるを得ないものももちろんありますが、初めのうちは、あくまで基本に忠実に、5~6時に持ってくるように努力する。

具体的には、「左側臥位ではどうか?」「右側臥位ならどうか?」など、体位変換まで行って、良いポジションを探し求めてみる。
あとは、左右アングル、上下アングルを駆使して、5~6時に病変が来るように「回す」。で、最終的には、右手はフリーの状態にしておかないとデバイスの微妙な出し入れができないので、右手をフリーにできるように、必要であればアングルロックします(←ふだんは、ロックは使いませんが、ほぼ、この時だけです)。

どうしても安定した5~6時を維持することが無理なら、「介助者に、スコープを押えててもらう」も、やむをえません。自分のプライドよりも、手技が確実に行えることのほうが大事ですから。

②スネアリングのコツ
 コールドポリペクトミーは、「熱を加えない」という特徴があります。ということは、「辺縁の熱焼灼効果」は期待できないわけですね。ですから、確実に、ある程度のマージンをもってポリープを切除する必要があります。
次から、下手なイラストを使って、自分なりにコツを表してみますね。
  まず、基本的な大腸の璧構造を示します。内腔面から、粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、筋層、そして漿膜ですね。

 ポリープは粘膜から発生していて、コールドポリペクトミーを行おうと考えるような病変なら、粘膜筋板を超えず、粘膜層だけに留まっているはずです(粘膜下層への浸潤が想定される病変なら、当然、コールドポリペクトミーを選択してはいけません!コールドでは、粘膜下層まで切除できたとしてもごくわずかですから。)

名称未設定のアートワーク
名称未設定のアートワーク

この璧構造を理解したうえで…、スネアは、上の図のようにかけるわけですね。
このとき、右側に描いた「上から見た図」のように、ポリープそのものから少しマージンを取って、スネアをかけます。このときのコツとしては、なるべく、内視鏡そのもので病変に近づくこと、デバイスを出す距離を長くし過ぎないことです。説明しづらいですが、内視鏡画面からほんのちょっとスネアの柄が出ている、くらいでいいんです。デバイスを出す距離が長すぎると、先端のブレが大きくなってしまいますから。

名称未設定のアートワーク

で、次に大事なポイントを上の図に描きました。スネアを締めていくときに、上の図で赤矢印で示したポイントをしっかり粘膜に押し付けて固定していないと、粘膜の上を滑って、病変基部にスネアが近づいていってしまいます。ですので、ここをしっかり押し付けることを意識します。具体的な操作としては、5~6時方向に病変をポジショニングできているのであれば、ダウンアングルをかける。5~6時が無理で、3~4時方向に病変が来ているのであれば、ダウンに加えて少し右アングルもかける。といった具合です。もちろん、「しっかり」といっても、押し付け過ぎはダメですよ!この加減が、伝えづらいのですが…。

で、最後のコツ。右上の図を見ていただきたいのですが、結局スネアを締めていくとき、こういうふうに、周りの非腫瘍粘膜をたぐりよせながら絞めていくわけです(この図だと、粘膜下層がガッツリ取れすぎですが。実際はこんなに取れません)。このことをイメージしながら、介助者にスネアを締めてもらいます。
介助者がスネアを締めていくと、スネアは全体に、スコープに近づいてきてしまいますね。このとき術者は、近づいてくる分を相殺するように、デバイスを鉗子孔から右手で押し出して、距離を一定に保つ必要があります。この操作は重要です!(押し出し過ぎはダメですよ!)

最後、介助者に合図をして、スネアで病変を切除するわけですが、この瞬間にはしっかり右手でデバイスを持っておいて、切除の瞬間に(つまり、スネアがフリーになった瞬間に)跳ねることを防ぐ操作を、必要であれば、します。ちゃんと5~6時方向に病変を位置させて、無理なくスネアリングできていた場合には、そこまで強くスネア基部を粘膜に押し付けていることはないので、切除の瞬間にそこまでスネアが跳ねることはないのですが、どうしても12時方向で切除しないといけなかったときなどは、スネア基部を強めに押し付けていますので、切除の瞬間のこの配慮は重要です。

言葉で表すの難しいわ…。
でもこれで、次にレジの先生に教えるとき、もう少しスラスラと要点を教えられる気がします!

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とある病院で働く内科医。物覚え悪し。
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